ヒトの眼は光子を認識している

 

ヒトの網膜の視細胞(杆体と錐体)は、光子を吸収することで光を検出していることは古くから知られています[Hecht, Shlaer and Pirenne(1942)]。現在では、ヒトの杆体細胞は、光子1個レベルの刺激でも検出できることが分かっています[Jonathan N. Tinsley et al. (2016)]。光の明るさを表す物理量として、照度(lx)が広く用いられていますが、照度は、光放射照度にCIE標準比視感度を適用することで、以下のように定義されます。

fi:波長λiの時の分光放射照度(W/㎡/nm)
Vi:波長λiの時の比視感度(無単位)
Km:Wをルーメンに変換する係数(Km=683 lm/W)

しかし、視細胞が光子を検出しているのであれば、光の明るさを、照度のように光のエネルギー(放射照度)を基準として表すのではなく、光子数、すなわち光量子束密度(PFD)を基準として定義したほうが合理的なのではないかと考えられます。

C. Martinsons らは、2024年の論文“Reconsideringthe spectral distribution of light: Do people perceive watts or photons?”で、視覚を含む光化学的・光生物学的作用は、本質的に光子の作用によるので、光子系(photon system)を用いることが適切であると述べています。

光子ベースの明るさは以下の式で表現されます。

pi:波長λiの時の分光光量子束密度(µmol/㎡/s/nm)
Vi:波長λiの時の比視感度

上記の式から、人間の眼で見た「光子ベースの明るさ」は重み付け光量子束密度(µmol/㎡/s)になります。

しかしながら、分光放射照度に基づいて算出される「照度」は、光子の概念が確立される以前から定義されており、現在でも一般的に使用されています。





0 件のコメント:

コメントを投稿